2016年のF1世界選手権
![]() 2016年のF1世界選手権は、FIAフォーミュラ1世界選手権の第67回大会として開催された。 概要ロズベルグの初タイトル獲得と引退![]() この年もメルセデスが21戦中19勝(勝率90.47%)、ポールポジションを逃したのはモナコGPの1回のみ、ワン・ツー・フィニッシュ8回の成績を残し、1988年に16戦中15勝で勝率93.75%を誇ったマクラーレン・ホンダに迫る勝率を記録した。 初タイトルを目指すニコ・ロズベルグが開幕4連勝(前年終盤戦を合わせると7連勝)を飾る一方、2014年・2015年王者ルイス・ハミルトンはトラブルやアクシデントで出遅れ、第4戦ロシアGPの地点で早くも43ポイントの差がついた。しかし第6戦モナコGPでハミルトンがシーズン初優勝を飾ると、第12戦ドイツGPまでの7戦で6勝を飾り、この間、不調に陥ったロズベルグを逆転する。だがサマーブレイクが明けるとロズベルグは3連勝を飾って再びハミルトンを逆転。マレーシアGPでは独走中のハミルトンがエンジンブローでリタイア、日本GPでもロズベルグが優勝したことで、この地点で両者の差は33ポイントとなった。残る4戦でハミルトンは4連勝を飾るが、ロズベルグも4戦連続2位となった結果、最終的に5ポイント差で逃げ切ったロズベルグが自身初のワールドチャンピオンに輝き、1982年の王者ケケ・ロズベルグを父に持つロズベルグは、グラハム・ヒル/デイモン・ヒル以来となる、2組目にして20年ぶりの親子2世代F1チャンピオンとなった。 コンストラクターズタイトル3連覇を果たしたメルセデスだったが、第5戦スペインGPではオープニングラップに同士討ちを演じ、第9戦オーストリアGPでも最終ラップに両者が接触。ハミルトンがエンジントラブルの集中に不信感を募らすなど[1]、チームは激しいタイトル争いを演じる両者の扱いに神経を使わねばならなかった。 ロズベルグはFIAの年間表彰式当日(12月2日)に突如引退を発表。本人は日本GPの頃から意識し始め、アブダビGP決勝の翌日に決心したと明かした[2]。チャンピオンを獲得した年に現役引退するのは、マイク・ホーソーン(1958年)、ジャッキー・スチュワート(1973年)、アラン・プロスト(1993年)に続く4人目の事例となる。 フェルスタッペンのレッドブル昇格と初優勝![]() 前年に未勝利でコンストラクターズランキング4位に終わったレッドブルは、ルノー製パワーユニット(以下、PUと略す)との決別を宣言しながらも他エンジンサプライヤーとの交渉がまとまらず、結局「タグ・ホイヤー」のバッジネームをつけたルノー製PUで参戦した。 第4戦ロシアGPでチームメイトを巻き込み、セバスチャン・ベッテルをリタイアさせる接触事故を起こしたダニール・クビアトは、ジュニアチームのトロ・ロッソへの降格処分を受け、代わって前年弱冠17歳で衝撃的なF1デビューを果たしたマックス・フェルスタッペンがレッドブルに昇格、この采配は物議を醸したが、フェルスタッペンは昇格初戦のスペインGPにて史上最年少優勝を成し遂げた。シーズン中、フェルスタッペンにはその才能を称賛される一方で[3]、攻撃的なドライビングにより多くの批判を受けたが[4]、最終的にドライバーズランキング5位でシーズンを終え、今後に大きな期待を持たせる結果となった。 エースドライバーのダニエル・リカルドもモナコGPで自身初のポールポジションを獲得するが、タイヤ交換ミスで優勝を逃す不運に泣かされた[5]。第16戦マレーシアGPではリカルドが2年ぶりの優勝を成し遂げ、2014年のPU導入以来初めてメルセデス以外のチームのワン・ツー・フィニッシュを達成した。新コンビの競争意識が良い形に作用したレッドブルは[6]コンストラクターズ2位に返り咲いた。 一方で、メルセデスの対抗馬と期待されていたフェラーリは序盤こそ悪くはなかったが、テクニカルディレクターのジェームズ・アリソンがシーズン途中に離脱するなどマシン開発が進まず、中盤以降は表彰台すら登れないレースが目立って最終的に未勝利に終わり、コンストラクターズ3位に終わった。 新チーム参戦、オーナーシップの交代2014年に参戦発表・エントリーが認められていたハースF1チームが新規参戦。F1への新規参入は2010年にヴァージン(後のマルシャ、現・マノー)、ロータス(後のケータハム)、HRTの3チームが参戦して以来となる。開幕戦では予選はQ1落ちだったものの決勝ではエースドライバーとして移籍したロマン・グロージャンが6位入賞。以降も計5度の入賞を記録し、コンストラクターズランキング8位でシーズンを終えた。 ロータスF1チームは前年度末に資金難が深刻化し、ルノーが買収[7]してワークスチームとして再編成することが発表された[8]。70年代のルノーを彷彿とさせるイエローカラーのマシンに大幅パワーアップを果たしたPUを搭載したが、苦戦が続きケビン・マグヌッセンの7位を初めとする3度の入賞に留まってコンストラクターズランキングは9位となった。 前年奇跡的に復活したマノー・マルシャF1チームはマノー・レーシングに名称を変更。コンストラクター名は「マノー」、シャシー名は「MRT」に変更された[9]。ドライバー起用の際には高額な資金を要求するなど資金難は相変わらずだったが、レースではパスカル・ウェーレインがオーストリアGPで10位入賞し2年ぶりにポイントを獲得。一時はザウバーを上回る見せ場もあったが、終盤ザウバーに逆転されコンストラクターズランキング11位で最下位となった。 そのザウバーは深刻な財政難から給料遅配が相次いで撤退の可能性まで噂されたが、7月20日に共同株主だったスイスのロングボウ・ファイナンスS.A.へ所有権を譲ることが正式に発表され、チーム創設者のペーター・ザウバーはチーム運営から完全に手を引いた[10]。 1980年から長年にわたってマクラーレンのチーム運営に関わっていたロン・デニスが、11月15日に行われた株主総会を受け、マクラーレン・テクノロジー・グループの会長兼CEOを辞任した[11]。 ドライバーの世代交代ジェンソン・バトンは当初2017年をマクラーレンのリザーブドライバーとなって2018年以降に復帰する可能性があると発表されていたが、後に「アブダビGPがラストレースになる」と発言。2000年デビューで17シーズンを戦い現役では最も長いキャリアで、出走数308戦は最多出走記録を持つホンダ時代のチームメイトのルーベンス・バリチェロに次ぐ歴代2位となった。なお、バトンはフェルナンド・アロンソが2017年のインディ500に参戦するため、同日に開催される2017年モナコGPに代役として参戦する。 フェリペ・マッサはイタリアGPを前にF1引退を表明[12]していたが、ロズベルグ引退に伴うバルテリ・ボッタスのメルセデス移籍を受けて引退を撤回、来季も引き続きウィリアムズから参戦する事になった。 これにより2000年代前半から参戦しているドライバーはマッサの他にキミ・ライコネンとアロンソの3人となり、より一層F1ドライバーの若年化が顕著になった[13][14]。 なお、この年から満18歳未満のドライバーの参戦を認めないほか、最低2年間は下部カテゴリーでの経験を積む事を要求するなど、参戦資格(スーパーライセンスの発給資格)をより厳格化した[15]。 この年はジョリオン・パーマー、パスカル・ウェーレイン、リオ・ハリアント、ストフェル・バンドーン、エステバン・オコンの5人がF1デビューを果たしている。 その他のトピック![]()
レギュレーションの変更この年はシャシーに関する変更はなかったが、それ以外の箇所については以下の通りであり、シーズン中に度々変更されたものもあった。 技術規定
競技規定予選ルール開幕戦オーストラリアGPと第2戦バーレーンGPの2戦のみノックアウト方式をベースに、セッション中一定時間ごとに最下位のドライバーが足切りされる新ルールを採用[26]。
この新ルールについては当初、計時システムのソフトウェア変更に時間を要するため、早くても5月以降の導入を見込んでいた[27]が、問題が解決されたため開幕戦オーストラリアGPから導入された。しかし、Q3でフロントロー独占を確定させたメルセデス勢がタイヤ温存のために早々と走行を終了、他チームも追従(タイヤが消耗していくので回数を重ねてもタイムの向上は望めないため)残り3分の時点で1台も走っていない事態に陥ったこともあり、翌日の決勝レース前に新ルール撤廃案が出され、一度は前年までのルールに戻すとされたが、レース後に改めて行われた会合にて全会一致とはならず第2戦バーレーンGPでも継続された[28]。バーレーンGP後に再検討をした結果第3戦中国GPから前年までのルール(ただし、前年と出走台数が異なるため、Q1で22台→16台、Q2で16台→10台となる)に戻すことが決まった[29]。 タイヤルール
ドライバーエイドの制限
その他の変更
参戦チーム・ドライバーエントリーリスト各チームがメディアを通じて発表し、報道された内容に基づく。 前年度チャンピオンのルイス・ハミルトンはカーナンバー「44」を継続して使用するため、2年連続でカーナンバー「1」が不在のシーズンとなった。 ドライバー変更
開催地2015年12月2日のFIA世界モータースポーツ評議会にて正式日程が決定した[23]。従来F1のシリーズ戦は「最大20戦」となっていたものを「最大21戦」に増加させたため、F1史上初の全21戦のカレンダーとなっている。 前年からの変更
シーズン結果レースこの年からF1公式サイトにて、レースごとにファン投票により「ベストドライバー」を選出する「ドライバー・オブ・ザ・デイ」が導入された[103]。 ドライバーズ・ワールド・チャンピオンシップ(選手部門)上位10台には以下のポイントが加算される。
(略号と色の意味はこちらを参照)
太字 - ポールポジション、斜体 - ファステストラップ コンストラクターズ・ワールド・チャンピオンシップ(製造者部門)ポイントシステムおよび以下の書式はドライバー部門と同一である。
ペナルティポイントペナルティポイントが12ポイントになると1戦出場停止。ポイントは12か月有効
(注)前年度繰越の()内の数字は、開幕時点の有効ペナルティポイント テレビ放送・インターネット配信
日本フジテレビが2015年に引き続いて放送権を獲得したことを2016年2月9日に正式発表した。CS放送のフジテレビNEXTで全レースをフリー走行から決勝まで完全生中継する[140]。ただし、前年と異なり、フジテレビNEXT smartでのネット配信は原則として行われず[141]、CS放送またはジュピターテレコム系CATVでのチャンネル契約者のみスカパー!オンデマンドまたはJ:COMオンデマンド経由でネット配信を受けることができる[142][143]。また、フジテレビONEや2012年から中継してきたBSフジでの録画放送は行われないため、日本で1987年から続いてきた「全戦無料放送」が途絶えた。 ただし、日本GPのみBSフジで決勝の録画放送をレース当日の深夜に行う。 →日本におけるテレビ放送の詳細については「F1グランプリ」を参照
一方、パフォーム・グループが2016年8月23日より日本でサービスを開始したスポーツライブ配信サービス「DAZN」では、同月26日より開催のベルギーグランプリから、金曜フリー走行から決勝までの全セッション及び下位カテゴリのGP2・GP3・ポルシェカップの中継配信を実施する[144]。 イギリス英国放送協会(BBC)がF1中継から撤退[145]。無料放送はチャンネル4が引き継ぐものの、生中継は10レースのみで、残るレースはダイジェスト放送となる[146]。 脚注
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